やっと座れた、と思ったのに。
——家族の「おなかすいた」は、待って、くれない。
品数も、彩りも、今日は、むり。
——ごめんね、と、心のどこかで、思いながら。
それだけの、五分の、晩ごはん。
——手をかけられなかった、うしろめたさと、いっしょに。
手を抜いたはずなのに。急いだはずなのに。
——なぜか、その一杯は、ちゃんと、おいしい。
そうめんも。うどんも。ありあわせの、卵とじも。
——なぜか、ちゃんと手をかけた、味になる。
たいしたもの、作っていないのに。
——あなたは、ちょっとだけ、救われた気が、する。
考えたことも、なかった。いつも、そこに、ある一本。
——その答えは、遠くの、静かな蔵にある。
あなたが、ほんの数秒で、かたむける一本。
——そこに辿り着くまでの、長い、長い時間がある。
早く仕上げる方法なら、いくらでもあった。
——それでも、急がずに、季節が巡るのを、待った人がいる。
味をごまかすものは、何も、入れない。
——あなたが五分で使う一本に、一年を、かけた人がいる。
だから、疲れた日でも。
あなたの食卓は、
ちゃんと、おいしい。
ごめんね、なんて、もう、思わなくていい。
——かけるだけで、あなたは、ちゃんと、家族を満たせている。