ごちそうじゃない。写真も撮らない。SNSにも、載せない。
——ただ、おなかを満たすための、いつもの、夕飯。
主役じゃない。誰も、褒めない。名前だって、気にとめない。
——でも、無いと、なんだか、物足りない。
おかずが地味な日も。疲れて、なにもしたくない夜も。
——これが、あれば、もう一口。ごはんが、パクパク、進んでいく。
派手なごちそうは、たまに、でいい。
あなたの毎日を、ほんとうに支えているのは、こういう、小さなものだ。
覚えていないくらい、当たり前に、そこにあった。
——大人になったあなたが、気づけば、同じものを、選んでいる。
食が細くなっても、これだけは。
——派手なものより、こういうものが、うれしくなる歳が、たしかに、ある。
寒い風に、何日も、さらして。時間をかけて、ゆっくりと、漬けて。
——あなたが二秒で口に運ぶものに、誰かの、長い季節がある。
流行りに走らず、ただ、変わらない一切れを、今年も。
——「まずは、この冬を乗り切って、一歩ずつ」。そう、言いながら。
変わらない、ということが、どれだけ、ありがたいか。
——騒がしい世の中で、それは、静かな、贅沢だ。
派手じゃなくても、毎日は、
ちゃんと、満ちている。
特別な日じゃなくていい。なんでもない一膳を、あなたは、ちゃんと、満たせている。
あなたが、親に、そうしてもらったように。
——変わらないものは、こうして、次の食卓へ、手渡されていく。