駅まで急いで、階段をのぼって、仕事場で立ちっぱなしで。
気づけば一日、何千歩も。——あなたの毎日は、そのほとんどが、足の上にある。
手も、顔も、毎日ていねいにケアするのに、足のことは、いつも後回し。
——いちばん働いているのに、いちばん、気にかけてもらえない場所。
足が重い。むくむ。靴の中が蒸れて、気持ちわるい。
——理由は足元にあるのに、あなたはそれを、ずっと「疲れ」のせいにしてきた。
一日の終わりに、足が、まだ機嫌よくいられたら。
それだけで、あなたは、もう少し、やさしくいられる。
すれ違う人にも、家族にも、自分にも。
足が疲れていないだけで、人は、こんなにも、機嫌よくいられる。
一日じゅう歩いたのに、締めつけの跡も、むくみも、ない。
——今日は一日、足のことを、一度も、恨まずにすんだ。
朝、足を通した瞬間のことを、あなたは、もう思い出せない。
存在を、主張しない。——ほんとうにいいものは、たいてい、気づかれない。
どこか、ちいさな町の、小さな工場で。あなたが今日どこを歩くのかも、知らずに。
——あなたの足元は、会ったこともない誰かの、ていねいさに、守られている。
駅の階段も、立ち仕事も、また同じ。
——でも、一日の終わりの足は、もう、重くない。
いちばん見えない場所から、
自分を、大切にできる。
足元にまで、気を配れる人は、たぶん、自分の扱い方を、知っている。
いい一足を選ぶことは、いい作り手を、残すこと。
——あなたの毎朝が、名も知らない誰かの、明日をつむいでいく。