ブランディングに取り組もうとしても、ロゴを作り直すのか、チラシや看板を出すのか、それとも別の何かなのかが決められない。作れるものの候補はたくさんあるのに、どれを選べばブランディングになるのかが分からず、手が止まってしまいます。

取り組んでいる会社は少なくありません。中小企業白書2022に載った約5,000社の調査では、ブランドの構築・維持に取り組む企業の55.9%が、ブランドが取引価格の維持・引上げに役立ったと答えています(取り組んでいない企業では17.2%)。

ロゴ・広告・お店・Webサイトのそれぞれで何をするのかは、ブランドで一貫している会社の例を見ると分かります。費用をかけずに始められる最初の一歩もあります。

ブランディングとは、お客様がロゴ・広告・お店・商品・接客のどれに触れても同じ期待を抱けるようにすること

ブランディングとは、お客様がロゴ・広告・お店・商品・接客のどれに触れても、同じ期待を抱けるようにしていくことです。ロゴを作ることも広告を出すことも、それだけではブランディングになりません。どれも、お客様が会社に触れる入口の1つです。

お客様は広告を見て、お店に入り、商品を使い、店員と話します。どの入口から入っても同じ期待にたどり着くように、入口を1つずつそろえていく取り組みがブランディングです。

お客様が抱く期待「この会社なら」ロゴ広告お店商品接客どの入口から触れても、同じ期待にたどり着く灰色=会社が出すもの 赤=お客様の頭の中
ロゴも広告もお店も、お客様が同じ期待にたどり着く入口 5つは会社が出すもので、真ん中の期待はお客様の頭の中にできます。どの入口から入っても行き着く先が1つになるように、入口をそろえていくことがブランディングです。

ブランドとは「この会社なら、なりたい自分に近づけそうだ」とお客様が抱く期待のこと

ブランドとは、「この会社なら、なりたい自分に近づけそうだ」とお客様が抱く期待のことです。お客様がお金を払って手に入れたいのは、商品そのものより、それを使ったあとの自分です。

期待であって、約束ではありません。お客様は「必ずなれる」と思って買うわけではなく、「近づけるかもしれない」と思えるだけで、ほかの会社でなくその会社を選びます。

期待はお客様の頭の中にできるので、会社が直接つくることはできません。会社にできるのは、お客様が触れるロゴ・広告・お店・商品・接客を、その期待につながるように整えることです。

お客様の頭の中今のお客様なりたい自分「この会社なら近づけそうだ」=ブランド(期待)ロゴ広告お店商品接客会社がするブランディングこの5つを、なりたい自分に向けて整えること
ブランドはお客様の頭の中の期待で、会社が整えられるのはそれにつながるもの 上の段がお客様の頭の中、下の段が会社の手で整えられるものです。会社は期待そのものに手を出せず、下の5つを整えます。

お客様が口にする言葉と、期待の中身がずれていることもあります。例えば「安く、早く届けてほしい」と言う法人のお客様が、本当に近づきたいのは「備品が切れたと社内から言われない自分」かもしれません。言葉はそのまま受け取り、そのうえで言葉の奥で何に近づきたいのかを見ます。

ブランディングの方法は、ロゴ・広告・お店・Webサイト・商品を同じ期待に向けること

ブランディングのやり方を調べると、ロゴ、広告やCM、看板やお店、チラシ、Webサイト、検索の記事やAIの答え(SEO・LLMO)まで、いろいろな手段が出てきます。どの手段でもやることは同じで、お客様に抱いてほしい1つの期待に向けて作り、直すことです。どれか1つを選ぶ話ではありません。

一貫している会社は、手段ごとに別々のことをしていません。ロゴ・広告・お店・Webサイト・商品のそれぞれで、会社がどこに向けているかを並べると次のようになります。

方法会社の例どこに向けているかロゴApple指定したロゴだけを決めた形で使う広告・CMAppleお客様が撮った写真を広告に使うお店・看板スターバックス家でも職場でもない「サードプレイス」Webサイトクラシコム「フィットする暮らし、つくろう。」商品・包装無印良品「しるしの無い良い品」検索・AISEO・LLMO―Webサイトに書く言葉をほかの手段と同じ向けに
一貫している会社は、どの方法も1つの向け先に向けている 方法は会社ごとに違っても、右の列の向け先は会社ごとに1つです。検索やAIの答えも、Webサイトに書く言葉から同じ向け先に向けられます。

チラシや営業資料も同じです。商品の機能を並べる前に、手に取ったお客様が「この会社なら」と思える一文を決め、写真や見出しをその一文に合わせると、広告やお店と同じ期待につながります。

検索の記事やAIの答えも、手段の1つです。Webサイトや記事に書く言葉がほかの手段と同じ期待で書かれていれば、検索から来たお客様も同じ期待にたどり着きます。

Apple はりんごの印を決めた形だけで使い、広告にはお客様が iPhone で撮った写真を使う

Apple は、社名と同じりんごの形の印を、製品にもお店にも広告にも使っています。販売店が広告で使う場合も、Apple が指定したロゴだけを、Apple との関係を示す決めた語句と一緒に使うよう、公式の決まりで定めています(Apple「Copyright and Trademark Guidelines」)。どこで見ても同じ印になるように、ほかの会社の広告での使い方まで決めているわけです。

広告も同じ向きです。Apple は2019年に「Shot on iPhone」と名づけたコンテストを開き、お客様が iPhone で撮った写真を募りました。世界中の応募から10点を選び、いくつかの都市の屋外広告や直営店、オンラインに使うと発表しています(Apple Newsroom「iPhoneで撮った最高の写真をシェアしよう」)。

広告に出たのは、カメラの性能の説明ではなく、お客様が撮れた写真でした。見た人は「このiPhoneなら、自分もこう撮れそうだ」と思えます。ロゴの決まりと写真の広告は別の手段ですが、どちらも同じ期待に向いている、と当社は見ています。

ロゴりんごの形の印他社が広告で使うときもAppleが指定したロゴだけを決めた語句と一緒に広告お客様がiPhoneで撮った写真から10点屋外広告・直営店・オンラインに使う(2019年)お客様が抱く期待(当社の見方)「このiPhoneなら、自分もこう撮れそう」実線の箱=公式の事実 点線の枠=当社の見方
Appleのロゴと広告は、どちらも「自分もこう撮れそう」という期待に向いている ロゴの決まりと写真の広告は別の手段ですが、行き着く先は同じ1つの期待です。

スターバックスはお店を、クラシコムはWebサイトを、お客様が過ごしたい時間や暮らしに向けている

スターバックスは会社案内で、1996年に銀座で日本1号店を開いてからの歩みとして、家でも職場でもない「サードプレイス」の提案を挙げています。コーヒーは家でもほかのお店でも飲めます。それでもスターバックスを選ぶお客様は、「ここなら、家でも職場でもない場所で自分に戻れる時間を過ごせそうだ」と期待して足を運んでいる、と当社は見ています。お店は、その期待にいちばん長く触れてもらえる入口です。

スターバックスのお店で、緑のエプロンを着けた2人の従業員がカウンターの内側で笑顔を見せている
スターバックスの会社案内の冒頭の写真 家でも職場でもない「サードプレイス」の提案を、会社案内で自社の歩みとして挙げています。 出典: 会社案内|スターバックス コーヒー ジャパン

クラシコムは、通販のWebサイト「北欧、暮らしの道具店」を運営する会社です。企業理念に「フィットする暮らし、つくろう。」と掲げ、その意味を「自分の生き方を自分らしいと感じ、満足できること」と説明しています。雑貨の機能でなく、お客様が近づきたい暮らしを会社の言葉にしています。お客様がいちばん多く触れるWebサイトも、この言葉に向けた入口だと当社は見ています。

クラシコムの会社紹介ページの企業理念の欄。見出しは「フィットする暮らし、つくろう。」
クラシコムの企業理念「フィットする暮らし、つくろう。」 会社紹介のページの企業理念の欄です。 出典: クラシコムについて | クラシコム
スターバックスクラシコム手段お店手段Webサイト(北欧、暮らしの道具店)会社の言葉家でも職場でもない「サードプレイス」の提案会社の言葉「フィットする暮らし、つくろう。」お客様が手に入れたいもの自分に戻れる時間お客様が手に入れたいもの自分らしいと感じられる暮らし手段は違っても、会社の言葉がお客様の過ごしたい時間・暮らしで書かれている下の段は当社の見方
スターバックスはお店を、クラシコムはWebサイトを、会社の言葉に向けている お店とWebサイトという違う手段を、会社の言葉が、お客様が過ごしたい時間や暮らしにつないでいます。

無印良品は名前・商品・包装のどれでも、しるしや飾りを省いている

無印良品は、「しるしの無い良い品」という意味の名前で1980年に生まれました。今も、素材の選択・工程の点検・包装の簡略化の3つを原則にしています(無印良品「What is MUJI?」)。

名前のとおり、商品にも包装にも飾りを足さず、省くことで同じ向きにそろえています。何を足すかより先に、何を省くかを決めている例です。

同じ向き:足さずに省く名前しるしの無い良い品商品素材の選択工程の点検包装包装の簡略化1980年に生まれ、今も変わらない3つの原則(素材の選択・工程の点検・包装の簡略化)
無印良品は名前・商品・包装を「省く」でそろえている 名前・商品・包装の3つが、「足さずに省く」という同じ方針でそろっています。

デザイン・ロゴ・広告・マーケティングは、お客様の期待を生むための手段

「それはデザインの話?」「マーケティングと何が違うの?」と迷ったら、だれの手にあるものかで分けると整理できます。デザイン・ロゴ・広告・マーケティングは、会社が用意する手段です。ブランドは、それに触れたお客様の頭の中にできる期待です。

  • デザインは、商品・お店・資料・サイトの見た目や使い勝手を形にすること
  • ロゴは、会社や商品を見分けるための印
  • 広告は、お金を払って商品や会社を知らせること
  • マーケティングは、誰に何をいくらでどう売るかを決め、売れる流れを作ること

どれも会社が主語の仕事です。ブランディングはこれらの手段をお客様の同じ期待に向けてそろえることで、デザインやマーケティングと取り合う仕事ではありません。向き先が決まっていれば、デザインもマーケティングも同じ期待に向けて進められます。

手段の向きがばらばら円はお客様の頭の中期待がぼやけるデザインロゴ広告マーケティング箱は会社が用意する手段手段の向きがそろう1つの期待デザインロゴ広告マーケティングブランディング=手段を同じ期待に向けること
デザインもロゴも広告もマーケティングも、会社が用意する手段 手段の向きがばらばらだと、お客様の頭の中の期待は1つになりません。手段を同じ期待に向けてそろえることが、ブランディングです。

手段の向きがばらばらだと、お客様の期待は1つになりません。広告では安さを打ち出し、お店では上質さを見せ、営業は対応の早さを話す。これでは、お客様は何を期待してその会社を選べばよいのかが分かりません。

ロゴや広告を新しくしても、お客様の期待が変わらなければブランドは変わらない

ブランディングと聞いて、ロゴの作り直しを思い浮かべる人は少なくありません。ロゴは見分けるための印です。米国マーケティング協会(AMA)の定義を載せた用語集も、ブランドを、ある売り手の商品やサービスをほかの売り手のものと区別して識別するための名前・言葉・デザイン・記号などの特徴、と説明しています(Brand | Universal Marketing Dictionary)。見分けがつくことは出発点ですが、お客様がなぜ選ぶのかまでは、この定義は言っていません。

ロゴを新しくしても、お客様が抱く期待が変わらなければ、選ばれ方は変わりません。どんな自分に近づけそうだと感じてほしいかが決まっていれば、ロゴはその期待を思い出してもらう印として作れます。順番は、期待を決めるのが先で、ロゴが後です。

ロゴだけ新しくする新しいロゴお客様の期待前と同じ選ばれ方変わらない期待を先に決めてからロゴを作る決めた期待ロゴ期待を思い出す印選ばれ方期待で選ばれる違いは順番。期待が先、ロゴが後
ロゴを替えても期待が同じなら、選ばれ方は変わらない 上の行は真ん中の期待が前と同じなので、右の選ばれ方も変わりません。下の行は期待が先にあり、ロゴはその期待を思い出してもらう印になります。

支援会社の中にも、同じ順番を勧めるところがあります。タナベコンサルティングのコラム「ブランディングは何から始める?経営者が最初に行う課題定義」(2026年10月27日)は、ロゴやWeb制作から始めず、先に理想の顧客、どんな場面で選ばれたいか、競合と比べて何を重視されるかを整理することを勧めています。

一貫している会社は、期待に合わない商品を売らず、接客の決まりもそろえている

Apple・スターバックス・クラシコム・無印良品に共通するのは、ロゴや広告を作る前に、お客様に抱いてほしい期待を決めていることです。期待が決まると、ロゴや広告より手前にある売るものと接し方も、同じ向きにそろえることになります。

ロゴや広告より前に、売るものと接し方をそろえる会社の例自社でやること無印良品は飾りや包装を省いた期待に合わない商品は売れていてもやめる候補にするスターバックスはサードプレイスを掲げたお店の居心地や接し方の決まりを期待に向けてそろえる社内で「ブランド」が見た目の話に取られた社内ではふだんの言葉に置き換える
一貫している会社に倣うと、売るもの・接し方・社内の言葉をそろえることになる 上から、お客様に近いものの順に並べました。左の例で何をそろえたかを、右の自社でやめること・決めることに写します。

無印良品が飾りや包装を省いたように、期待に合わないものは足さずに省きます。自社に当てはめると、お客様の期待に合わない商品やサービスは、売れていてもやめる候補になります。いろいろな商品が並ぶほど、お客様は何を期待してよいか分からなくなるからです。

競合との違いが見つからないと悩む社長に、当社の原田は差別化を考えなくてよいと答えたことがあります。その会社は取り組みが多く、何のための会社なのかを決めきれていなかったため、外からはぼやけて見えていました。違いを足すより、お客様が何を期待して来ているかを先に決める。それがその社長への答えでした。

やめる商品を決めるときは、売上の大きさより、その商品を買ったお客様が会社に抱く期待が、ほかの商品のお客様と同じかどうかで見ます。期待が違うお客様が混ざるほど、広告やお店で何を伝えるかが割れていきます。

スターバックスが「サードプレイス」を掲げるなら、お店の居心地や働く人の接し方も、その期待に向けて決めることになります。自社でも、担当者が変わっても同じ判断ができるよう、迷ったときの接客や対応の決まりを、お客様の期待からそろえます。

社内で使う言葉もそろえます。当社が支援したある会社の社長は、従業員に「ブランド」と言うと見栄えやかっこよさの話だと受け取られ、狙いと違う方向に動くのではと心配していました。社長本人も、この言葉はしっくりこなかったと話しています。そこで従業員向けの場では「ブランド」を使わず、社長がふだん使っている「品質」「らしさ」に置き換え、「お客様がうちに対して持つ印象や品質のこと」と説明し直すことにしました。

見た目を形にする仕事は外に頼めて、お客様の期待を決める仕事は自社に残る

ロゴ・サイト・資料のように形にする仕事は、外の専門家に頼めます。日本政策金融公庫総合研究所の「日本公庫総研レポート『「デザイン」で競争力を高める中小企業』を発行」(2021年11月29日)は、専門的な知識やスキルが必要な場面では、費用をかけて外部の専門デザイナーを起用したほうがよいとし、成果は一朝一夕には出ないので継続すべきだと述べています。

一方で、お客様が何を期待して自社を選んでいるかを決める仕事は、自社に残ります。お客様と毎日やりとりしている社長や営業、接客の担当者が、その答えにいちばん近い人です。外に頼むときは、自社で決めた期待を一文にして渡します。仕上がりの良し悪しを、その一文を物差しにして話せます。

ブランディングの仕事形にする仕事か、決める仕事か外に頼めるロゴ・Webサイト・資料・お店の内装を形にする自社に残るお客様が何を期待して選んでいるかを決める決めた期待を一文にして渡す
形にする仕事は外に頼めて、期待を決める仕事は自社に残る 外に頼むときは、自社で決めた期待を一文にして渡します。外の会社はその一文を受けて形にします。

SNSで露出を増やしても、お客様の期待が生まれなければブランディングにならない

SNSの投稿や広告を増やすことがブランディングだ、と考える人もいます。露出を増やすと、会社の名前を知る人は増えます。それは認知度の話で、ブランディングとは別のことです。

どんな会社かを知ってもらえても、まだ足りません。「〇〇をしている会社だ」と知っていることと、「この会社なら、なりたい自分に近づけそうだ」と期待して選ぶことの間には、もう1段あります。ブランディングはこの「期待して選ぶ」段をつくることです。

ブランディングがつくる段「この会社なら」と期待して選ぶ(ブランド)どんな会社か知っている名前を知っている(認知度)SNS広告露出SNS・広告・露出が届くのは下の2段まで期待して選ぶ段は、露出だけでは増えない
露出を増やして広がるのは、名前を知っている人の段 上の段ほど、選ばれる理由に近くなります。ブランディングは、いちばん上の「期待して選ぶ」段をつくる取り組みです。

露出を増やすこと自体は悪くありません。期待の向き先が決まったうえで発信すれば、知った人がそのまま期待する人に変わりやすくなります。向き先が決まらないまま露出だけを増やしても、選ぶ理由は増えません。

真っ赤なイチゴのように、お客様が自分から「美味しそう」と思える形に整える

もう一つよく聞くのが、「お客様にどう思われるかをコントロールすること」がブランディングだ、という見方です。

果物売り場を思い浮かべてください。「このイチゴは美味しいです」と書いた札を立てても、お客様は「本当に?」と思うだけです。真っ赤で粒のそろったイチゴがきれいに並んでいれば、何も言わなくても、お客様は「美味しそう」と思います。

思われ方をコントロールする自分からそう思える形に整える会社このイチゴは美味しいです本当に?お客様色・粒・並べ方を整える美味しそうお客様主語は会社主語はお客様
「美味しいです」と言うより、見て「美味しそう」と思えるイチゴに整える 左は会社の言葉でお客様の思いを動かそうとするやり方、右はイチゴそのものと見せ方を整えるやり方です。「美味しそう」は、右ではお客様の頭の中で生まれます。

ブランディングは思わせることではなく、お客様が自分からそう思える形に整えることです。会社が動かせるのは、イチゴそのものと見せ方までです。「美味しそう」と思うかどうかは、お客様の側で起きます。言葉で期待を押しつけるほど、お客様は疑います。

ブランディングに取り組むと、営業・採用・値決めの判断が同じ方向にそろう

取り組むと会社に何がいいのか。答えは、会社の判断の向き先が1つになることです。お客様が何を期待して選んでいるかが決まると、部署ごとにばらばらだった判断の物差しがそろいます。

営業では何を言えば売れるかを毎回探すより、お客様の期待に合う提案を選べるようになり、担当者が変わっても話がぶれにくくなります。

採用ではお客様の期待に応える仕事をしたい人が集まりやすくなります。入社してから「思っていた会社と違う」となる行き違いも、減らしやすくなります。

値決めでは競合の相場に合わせて下げるより、お客様が期待しているものの値打ちで値段を考えられます。

白書の調査は、東京商工リサーチが2021年11〜12月に中小企業・小規模事業者2万社へ送り、5,318社が答えたアンケートで、ブランドの構築・維持に取り組んでいる企業は36.8%でした。ブランドが取引価格の維持・引上げに「大いに」「ある程度」寄与したと答えた割合は、取り組む企業のほうが3倍以上高く出ています(2022年版「中小企業白書」 第1節 ブランドの構築・維持に向けた取組)。

取引価格の維持・引上げに寄与したと答えた割合ブランドの構築・維持に取り組む企業55.9%取り組んでいない企業17.2%0%50%100%「大いに」「ある程度」寄与の合計。企業の自己評価ほかの要因による差は除いていない(白書の注記)
ブランドに取り組む企業の55.9%が、価格の維持・引上げに役立ったと答えた 中小企業白書2022 第2-2-5図の数値を、当社が横棒にして作成しました。取り組む企業1,904社、取り組んでいない企業3,261社の回答です。 出典: 中小企業庁「2022年版 中小企業白書」第2部第2章第1節(株式会社東京商工リサーチ「中小企業の経営理念・経営戦略に関するアンケート」2021年11〜12月)

ただし、寄与したかどうかは企業の自己評価です。白書も、取り組みの有無以外の要因による差はコントロールしていない、と注意を付けています。取り組めば必ず値段を上げられる、とは言えません。言えるのは「取り組んでいる会社ほど、価格を保てたと感じている」までです。

最初の一歩は、長く選んでくれているお客様が何を期待しているかを書き出すこと

取り組むと決めたら、最初にやるのは書き出しです。ロゴやサイトの作り直しからは入りません。費用はかからず、一人でもすぐ始められます。

  1. 長く選んでくれているお客様を思い浮かべる。顔と、買ってくれた場面まで思い出せるお客様から書き始めると手が止まらない。
  2. それぞれが自社に何を期待して選んでいるかを書く。お客様が口にした言葉をそのまま答えにせず、その奥で近づきたい自分を書く。
  3. 聞ける相手には「うちを選んだのは、どこでしたか」と聞く。言われたままを書き留めてから、言葉の奥の期待を書き足す。
  4. 書いた期待と、会社案内に書いている強みを並べる。
01STEP 1長く選んでくれているお客様を思い浮かべる02STEP 2それぞれが自社に何を期待して選んでいるかを書く03STEP 3聞ける相手には「うちを選んだのは、どこでしたか」と聞く04STEP 4書いた期待と、会社案内に書いた強みを並べる差がある→ そろえる先が決まる差がない→ 今の強みをそのまま使う
最初の一歩は、4つの手順で終わる 4つ目で差が見えれば、ロゴや文章を作る前に、そろえる先が決まります。

当社が伴走してきたある会社には、通い続けるお客様がいたものの、競合でなくその会社が選ばれる理由は、まだ言葉にされていませんでした。社長と一緒にその理由を洗い出して言葉にすると、社長の整理は「新しい戦略ではなく、創業から続けてきたことを言葉にしただけ」というものでした。ロゴや発信物は、そのあとに作るものになりました。

書き出した期待が会社案内の強みと違っていればそろえる先が決まり、重なっていれば今の強みをそのままロゴや広告、お店に移せます。どちらの結果でも、次に整えるものがはっきりします。