※取材にもとづく編集記事です

VOL.005 IT・通信 公開 / 更新

クリエイターの価値は
納品ではなく活用で発揮されるもの

ふつうは 制作会社は納品のときに一度だけ代金を受け取り、反応が悪ければサイトは作り直しになる。

この会社は お客様が自分でサイトを書き足せる仕組みを自社で作り、公開後も月額で付き合い続ける。案件ごとにお客様から評価をもらい、チームと個人にフィードバックする。

いいサイトができた、と褒められて公開する。ところが問い合わせが増えず、数年後には作り直しになる。Web制作の仕事は、納品のときに一度だけ代金を受け取る形が多い。東京・日本橋浜町の株式会社GIGの代表取締役、岩上貴洋さんはそれを変えたいと考えた。GIGはお客様が自分でサイトを書き足せる仕組みを自社で作り、約400社と公開後も月額で付き合い続けている。案件が終わるたびにお客様から評価をもらい、チームと個人にフィードバックする。歌われ続けるかぎり印税が入る作詞家のように、成果が続くかぎり作り手に還元される形。岩上さんはそこを目指している。

株式会社GIG。Web制作・Webコンサルティング・システム開発・Web集客の支援、お客様が自分でサイトを書き足せる仕組み「LeadGrid」、フリーランスと仕事をつなぐ「Workship」、中途採用と社内で運用できる体制づくりの支援。本社は東京都中央区日本橋浜町。従業員は約100名、売上規模は20億円弱。2017年4月設立。

業種
Web制作・システム開発/フリーランス人材のマッチング
所在地
〒103-0007 東京都中央区日本橋浜町1-11-8 ザ・パークレックス日本橋浜町 4階
従業員数
約100名(2026年10月)
売上規模
20億円弱
設立
2017年4月
拠点
本社(日本橋浜町)
話を聞いた人
岩上 貴洋(代表取締役)
株式会社GIG 代表取締役 岩上貴洋さん。黒いジャケット姿で、社員が働くオフィスを背に笑顔で立っている

褒められて公開したサイトも、問い合わせが増えなければ数年後には作り直しになる

GIGのオフィスの打ち合わせの部屋。窓際に木のテーブルと椅子があり、床には手がけた仕事のポスターが並んでいる

岩上さんはこの場面を何度も見てきた。最初はお客様も「いいね」と言ってくれる。ところが問い合わせが取れない、使い勝手が悪いといった理由で成果が出ないと、次の作り直しのときに声がかからない。作った人の手元に残るのは、そのとき受け取った一度きりの代金だけだ。

数字を見ても、珍しいことではない。広告会社のル・プロジェが日経225を構成する225社のサイトの履歴を調べたところ、作り直しの間隔は平均5.5年で、7年目までに約85%の会社が作り直していた(2024年)。5年以内にサイトを作り直した企業の担当者120人に聞いた2025年の調査では、作り直したあと問い合わせや資料のダウンロードが「変わらなかった」と答えた人が47.5%いた(フォーサイトクリエイション)。

公開したあとの更新は「自社で」が58.3%で、作り直しを頼んだ制作会社に任せている会社は34.2%だった(同)。制作会社の仕事は公開でひと区切りになり、成果が出たかどうかは次の作り直しの相談で初めて分かる。

企業サイトの作り直しと、その後

  • 7年目までに作り直した会社(日経225構成企業、平均の間隔は5.5年)約85%
  • 作り直したあと、問い合わせ・資料のダウンロードが「変わらなかった」47.5%
  • 公開後の更新を「自社で」している58.3%
  • 公開後の更新を、作り直しを頼んだ制作会社に任せている34.2%
作り直しても、問い合わせが変わらない会社が半分近くある株式会社ル・プロジェ「日経225構成企業のWebサイト分析」(2024年1月・225社)、株式会社フォーサイトクリエイション「企業サイトリニューアルの実態」(2025年9月・サイト担当者120人)をもとに当社が作成。ル・プロジェ/フォーサイトクリエイション

納品を基準にするのをやめ、公開後も月額で付き合い続ける形に切り替えた

取材に答える岩上貴洋さん。窓際の木のテーブルで、両手を広げて笑いながら話している

岩上さんはこの「納品」を基準にする形をやめ、作ったものがどれだけ使われ、どれだけ成果を生み続けるかという「活用」を基準にすると決めた。納品を基準にしているかぎり、作り手の値打ちは上がらないと考えたからだ。

デザイナーだからこれぐらいの給与です、と言う人がたまにいるんです。めちゃくちゃいいものを作っているのに、なんでもっと評価されないのか。それを変えたいというのが根本にあります。

岩上 貴洋

デザインや作ることが好きな人ほど、作ることに集中する。それ自体は素晴らしいと岩上さんは言う。ただ、作った物で評価されるかぎり、値打ちは納品の日の値段で止まる。岩上さんはたとえ話で説明する。

問い合わせが3倍、4倍、5倍と増えるものを作れるなら、300万円でも5年で割れば60万円です。めちゃくちゃ安くないですか、と言える世界を作りたいんです。

岩上 貴洋

編集部なりに例えるなら、作詞家の印税に近い。歌が歌われ続けるかぎり、作詞家には印税が入り続ける。その歌詞がいまも聴く人に届き続けているからだ。Webサイトも、問い合わせを生み続けるかぎり作った人に還元される形があっていい。岩上さんが目指しているのは、そういう形だ。

そのためにGIGは、サイトの文章や写真をお客様が自分で書き換えられる仕組み(CMS)「LeadGrid」を自社で開発した。導入した企業は約400社。月額は数万円ほどで、一度作り直したサイトは5年ほど使われる。そのあいだGIGはお客様と付き合い続け、自社の集客で使っている知識を約200本のeラーニング動画にまとめて無償で渡す。3か月、半年、1年ごとには、車の車検のようにサイトの状態を点検する相談の場も設けている。

岩上さんのたとえ話:300万円のサイトなら

  • 300万円サイトの制作費
  • 5年一度作ったサイトが使われる期間
  • 年60万円5年で割った1年あたり
  • 3〜5倍たとえば、問い合わせがこれだけ増え続けるなら
成果が続けば、同じ300万円でも見え方が変わる取材でうかがったお話をもとに当社が作成。

作り直しの半年後、自然検索からの訪問は50倍を超え、記事はお客様の手で140本に増えた

GIGのオフィスで、メンバーがそれぞれの机でパソコンに向かって働いている

GIGが公開しているLeadGridの導入事例に、フィットネススタジオ「SMART STUDIO」を運営する株式会社SHAREの話がある。悩みは、検索から来る人が少なく、広告費が増え続けていたことだった。会員の料金を下げるには、広告費を減らす必要があった。

作り直しのあと、各店舗のスタッフがLeadGridで自分たちのブログを書き始めた。半年後には記事が140本を超え、月の自然検索からの訪問は約2,000から50倍以上に増えた(2023年2月時点)。2022年の顧客獲得単価は、前年から35%下がった。

自分たちのサービスを自分たちで紹介しようとすると、どうしても客観的な目線が持てず、情報がごちゃついてしまう傾向がありました。

株式会社SHARE、LeadGridの導入事例より

成果は公開した日に決まったのではない。公開したあと、お客様が書き足し続けた記事が積み上がって生まれた。GIGが付き合い続ける形にしたのは、この積み上がりを支えるためだ。

導入していただいた会社が、3年、5年たったときに必ず伸びているように。そのためにどうすればいいかを一生懸命考えて、できる限りサービスに含めるようにしています。

岩上 貴洋

SMART STUDIO(株式会社SHARE)の作り直しのあと

  • 約2,000作り直す前の、月の自然検索からの訪問
  • 50倍以上半年後(2023年2月時点で月10万超)
  • 140本超店舗のスタッフが書き足した記事
  • 35%減2022年の顧客獲得単価(前年比)
成果は公開した日ではなく、公開後に書き足した記事から生まれたLeadGrid の導入事例「SMART STUDIO」(株式会社GIG 公開)をもとに当社が作成。導入事例

7割を共通の基盤に載せ、残りを7万人のフリーランスと組んで作る

GIGの執務フロア。机と椅子が並び、奥の壁にバリュー「JUST HACK IT.」「Good is good.」の文字がある

同業の多くがやらないことを、GIGは2つ続けてきた。

一つは自社でCMSを持つことだ。日本語のサイトでCMSを使っているもののうち、8割以上はWordPressで作られている(W3Techs、2026年9月)。WordPressでいい、なぜわざわざ作るのか、と言われ続けながら、岩上さんはLeadGridを作り続けてきた。

毎回一から作ると、その会社のためだけの作りになります。それが300、500、1,000と増えたとき、全部を理解しているエンジニアはいません。同じ基盤に載せることは公開後の品質担保には必要でした。

岩上 貴洋

セキュリティのアップデートや検索の仕組みが変わって対応が要るときも、基盤を一度直せば載っている全部のサイトに届く。付き合い続ける前提なら、この差は年を追うごとに大きくなる。

もう一つは、フリーランスとチームを組むことだ。品質を守るなら社内で全部やるほうがいい、と考える制作会社は多かった。岩上さんはチームさえ組めれば会社の外へ広げられると考え、10年ほど前からフリーランスのネットワークを作ってきた。それがいまの「Workship」で、約7万人がつながっている。人が足りなければここから人を迎え、GIGの社員がプロジェクトマネージャーとして入る。LeadGridで制作することで、サイトの7割は標準化したつくりになる。フリーランスのチームが担うのは残りの3〜4割で済み、品質をそろえやすい。

LeadGrid に載せたサイトの作り

  • 共通の基盤(LeadGrid)で済む部分約7割
  • お客様ごとに、フリーランスを含むチームで作る部分3〜4割
7割を共通にするから、外の人と組んでも品質をそろえられる取材でうかがったお話をもとに当社が作成。

案件が終わるたびにお客様から評価をもらい、チームと個人にフィードバックする

GIGのオフィスの白い壁。バリューのひとつ「Making a great team.」の文字の下に、メンバーの顔写真のカードが並んでいる

成果を作った人に還元する手段として、GIGはお客様からの評価を使っている。プロジェクトが終わるたびに、お客様から数字で評価をもらう。プロジェクトはどうだったか、メンバーやクリエイティブはどうだったか、成果は出ているか。年に100〜200件の評価を集め、チームと個人にフィードバックする。

社内の評価だけだと、社内でいいかどうかになってしまいます。それを避けるために、お客様からの評価は必ずもらいに行きます。

岩上 貴洋

社員の評価の基準は3つのバリューだ。いいものを作れているか(Good is good.)、変化し、挑戦し、改善しているか(JUST HACK IT.)、チームで動き、ほかのメンバーが生きるように動けているか(Making a great team.)。お客様からの評価があるから、社内の評価が社内でいいかどうかだけで決まるのを避けられる。

作り手の値打ちを上げるもう一つの方法は、組み合わせのスキルだ。リーダー以上で一定の力を持つ人が、ジョブチェンジしたい、チームを移りたいと言ったら、GIGはほぼ半年以内に必ず実現させる。

これからは組み合わせのスキルが大事になります。デザイナー出身のエンジニアや、ディレクター出身の何か、というように、別の視点を持ったプロフェッショナルはとても貴重なんです。

岩上 貴洋

「仲間を大事にしなさい」と育った社長が、自分で集めた仲間の会社を離れた

GIGのオフィスのソファ席。窓に「Good is good.」の文字があり、メンバーがくつろいで話したり作業したりしている

岩上さんは埼玉の、代々続く本家に生まれた。父や親族から言われ続けたのは「仲間を大事にしなさい」だった。大学時代にはスタートアップに投資する会社にインターンとして入り、どんな事業なら伸びるのかを間近で見た。デザインや開発から入る人が多いこの業界に、岩上さんはどうすれば事業が成り立つのかという関心から入った。

22歳か23歳のころ、友人や先輩、後輩を集めて株式会社LIGを作った。社名は「Life is Good」の略だ。それぞれがやりたいことを追いかけることが、仲間を大事にすることにつながると考えた。事業はWeb制作から、ゲストハウス、スクール、海外の開発拠点まで広がった。

広がるほど、岩上さん自身が本気で向き合いたいことと、そうでない事業の差が開いた。本心で思っていないことを、仲間に伝えなければならない場面が出てきた。悩んだ末、10年ほどで会社を離れた。

仲間を大事にしなさいと言われて、自分で仲間を集めたのに、自分から抜けるのか。最終面接で言っていたことは何だったのか、と思っていますよね。それがいちばんつらかった。

岩上 貴洋

LIGでの経験は人生において大切な時間だったという。そのうえでGIGでは10年、20年と人生をかけて続けられる一つのことに絞った。作ったものが認められ、関わる人にきちんと還元される仕組みを作ることだ。仲間を大事にするとは、作った人に還元される仕組みを用意することでもある。岩上さんはそう考えるようになった。

数字で見る株式会社GIGの違い

川沿いの窓が並ぶGIGのオフィス。メンバーが窓際の席で働いている

設立は2017年4月。従業員は約100名、売上規模は20億円弱。

自社CMS「LeadGrid」の導入は約400社。月額は数万円ほどで、一度作ったサイトは5年ほど使われる。フリーランスのネットワーク「Workship」には約7万人がつながる。導入先に無償で公開しているeラーニング動画は約200本。プロジェクト後にお客様からもらう評価は年に100〜200件。

企業のサイトの作り直しは平均5.5年に1回で(ル・プロジェ、2024年)、作り直しても問い合わせが変わらなかった会社は47.5%ある(フォーサイトクリエイション、2025年)。その中でGIGは、公開後も月額で付き合い続ける形を選んだ。

  • 約400社LeadGrid の導入
  • 約7万人Workship でつながるフリーランス
  • 約200本導入先に無償で公開している動画
  • 年100〜200件プロジェクト後にお客様からもらう評価
成果が続くところまで付き合うための数字取材でうかがったお話をもとに当社が作成。

GIGのやり方を、自分の会社で使うための3つのこと

一つめ。代金を納品のときに一度だけ受け取る形をやめ、公開後も付き合い続ける形に切り替える。納品の日に評価が決まる形をやめれば、提案も働き方も、お客様の成果を見て決めるようになる。

二つめ。お客様が自分で書き足せる場を渡す。SMART STUDIOの成果は、公開後に店舗のスタッフが書いた140本の記事から生まれた。作り手がお客様と付き合い続けるには、お客様が自分で動ける仕組みが要る。

三つめ。評価を社内だけで決めない。お客様から数字で評価をもらい、チームと個人にフィードバックすれば、作り手の評価はお客様に生んだ成果で決まっていく。

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