※取材にもとづく編集記事です

VOL.006 人材・アウトソーシング 公開 / 更新

営業は1人で
全部できなくていい

ふつうは 営業は1人が1から100まで全部できるように育てる。

この会社は 営業の仕事をセクションに分け、向いているセクションに人を置く。

営業は1から100まで全部できて一人前。そう教わって育った人は多い。札幌の株式会社セルプライムの代表取締役、和田謙典さんもその一人だ。それでも和田さんは自社の営業をリストや顧客管理を整える人、アポを取る人、契約を決める人、契約後を支える人に分け、それぞれに向いている人を置いている。分けるとセクションごとに数字が見え、どこを直せばいいかがすぐ分かるからだ。セクションが違っても、評価の中心は一つにそろえている。仕事に誠実に向き合えているかどうかだ。

株式会社セルプライム。営業代行と営業コンサルティング(インサイドセールス・フィールドセールス・広告)、イベントの企画・設営・運営・撤去、物流や軽作業の現場の支援。本社は北海道札幌市北区。従業員は44名(社員7名・アルバイト37名。2026年10月)、売上規模は2億円前後。2018年1月設立。

業種
営業代行・営業コンサルティング/イベント運営
所在地
〒060-0809 北海道札幌市北区北9条西4丁目7-4 エルムビル6F
従業員数
44名(社員7名・アルバイト37名・2026年10月)
売上規模
2億円前後
設立
2018年1月
拠点
本社(札幌市北区)
話を聞いた人
和田 謙典(代表取締役)
株式会社セルプライム 代表取締役 和田謙典さん。白い壁の前で、紺のストライプのスーツに赤いネクタイを締め、手を前で組んで立っている

営業は「1から100まで全部できて一人前」と育てる会社が多い

新しいお客様を探し、アポを取り、商談で契約を決め、契約のあとも面倒を見る。この全部を1人でできて一人前、という育て方は営業の世界では珍しくない。和田さん自身も1から100まで全部できるようになれ、という文化の中で育った。

数字で見ても、営業の仕事をセクションに分けている会社は多数派ではない。HubSpot Japanが2022年に法人向け営業の売り手1,545人に聞いた調査では、インサイドセールス(電話やオンラインで商談の手前までを担うセクション)を入れている会社は42%だった。入れていない会社のほうが多い。同じ調査で、営業部門の課題の1位は「人材の育成」(48%)、2位は「営業ノウハウの属人化」(35%)だった。

人も足りていない。ウィルオブ・ワークが2025年に営業職521人に聞いた調査では、65.3%が自社の営業の人手を「足りていない」と答えた。育成が課題の1位にあり、そのうえ人も足りない。

法人向け営業の分業と、営業部門の悩み

  • インサイドセールスを入れている(法人向け営業の売り手)42%
  • 営業部門の課題「人材の育成」(1位)48%
  • 営業部門の課題「営業ノウハウの属人化」(2位)35%
  • 自社の営業の人手が「足りていない」と答えた営業職65.3%
営業の工程を分けている会社は半分に届かず、育成と人手に悩む会社が多いHubSpot Japan「法人向け営業の実態調査 2023」(2022年11月・売り手1,545人・実施マクロミル)、ウィルオブ・ワーク「営業代行サービスに関するアンケート調査」(2025年6月・営業職521人)をもとに当社が作成。HubSpot Japan/ウィルオブ・ワーク

営業の仕事をリスト・アポ・契約・契約後に分け、向いているセクションに人を置く

セルプライムの受付。白い壁に「株式会社セルプライム Cell Prime.Inc」のサインがかかり、手前に観葉植物が置かれている
札幌市北区のオフィスの受付。

セルプライムは営業の仕事を細かいセクションに分けている。リストを精査し、顧客管理を整え、見込みのお客様への連絡の漏れを防ぐ営業推進。電話をかけてアポを取るアポインター。商談で契約を決めるクローザー。契約のあとを支えるカスタマーサクセス。セクションごとのプロフェッショナルを育てることを、モットーにしている。

1から100まで全部できるようになる必要はないんです。スタッフの適性に合わせたセクションに配置してあげると、ミスが起きにくくなります。

和田 謙典

最低限の採用基準はある。そのうえで一人ひとりの能力や考え方、向き不向きを見てセクションを決める。足りないセクションがあれば、採用で人を増やす。

和田さんは全部できるように育った人だ。自分の育ち方とは違う形を選んだ理由の一つは、働く人の数が減っていることだという。

労働人口が減っている背景などを合わせて考えると、合うセクションに配置してあげるほうが、全員の幸福度は高いと思っています。お客様も含めてです。

和田 謙典

セルプライムの営業のセクション

  • 営業推進リストの精査・顧客管理・見込みのお客様への連絡の漏れを防ぐ
  • アポインター電話をかけて商談のアポを取る
  • クローザー商談で契約を決める
  • カスタマーサクセス契約のあとを支える
1人に全部を任せず、セクションごとにその道のプロを育てる

セクションごとに数字が見えるから、どこが足りないかがすぐ分かり、同じやり方を次の案件で繰り返せる

分けたいちばんの理由は運営のしやすさだ。採用もしやすく、教育もしやすい。何より、案件ごとに数字が見える。

分業にすると、KPIがかなり見えやすくなります。どこのKPIがどれだけ足りないか、どこが上振れているかがすぐ分かるので、改善しやすい。再現性も上がるので、プロジェクトの成功率自体が高まると考えています。

和田 謙典

1人が全部を担っていると、契約が取れなかったときに、リストが悪かったのか、アポの取り方か、商談かを切り分けにくい。セクションを分ければ、数字の落ちているセクションがそのまま直す場所になる。

新しい案件を立ち上げるときは、和田さん自身が現場に入る。一緒に手を動かしながら最初のたたき台を作り、そのあとはセクションごとの数字を見て直していく。

数字が見えていることは、お客様への提案にも使っている。セルプライムはいろいろなセクションの数字をまとめて見ているので、「ここに予算は使わなくていい」「優先するのはこちらではないか」とお客様に言える。予算と成果の最適化がしやすいのだと和田さんは話す。

契約が取れなかったとき、どこを直すか

  • 1人が全部を担うリスト・アポ・商談のどこが原因かを切り分けにくい
  • セクションに分けるセクションごとの数字で、足りない所と上振れている所がすぐ分かる
  • 直す数字の落ちたセクションを直し、うまくいったやり方を次の案件で繰り返す
数字の落ちたセクションが、そのまま直す場所になる

アポ担当にはクローザーに上がる道と、アポのスペシャリストを目指す道の両方がある

セクションを分けると、ずっと同じセクションに固定されるように見えるかもしれない。セルプライムではアポインターのセクションからクローザーを目指す道を、常に選択肢として出している。クローザーのほうが収入も上がる。アポインターのチームは基本的にはクローザーを目指す人の集まりで、その中からクローザーに上がる人が常に出ている。

アポで成果が出やすいのは、愛嬌があって最初の壁を作られにくい人だという。順当に行けば営業の力をつけてクローザーに上がる。ただ、相手と深い関係は持たず、軽い話にとどめたいという人もいる。

より深い部分に踏み込んでいくことはしたくない、という方もいます。そういう場合は無理にクローザーに上げず、アポのスペシャリストを目指してもらう選択肢も用意しています。

和田 謙典

クローザーに上がる道も、アポのスペシャリストを目指す道もある。どちらを選んでも、その人の向き不向きに合ったセクションで力を出せる。

セクションが違っても、評価の中心は仕事に誠実に向き合えているかどうか

クローザーに何を求めるかを聞くと、和田さんは話し方の上手さより先に、勉強の話をした。案件ごとに、売る商品やサービスの知識が要るからだ。

スクリプトやマニュアルはもちろん用意しています。それでも、商品やプロジェクトの内容をしっかり勉強して、自分の言葉で説明できるかどうかが求められます。そこに一生懸命向き合えるかどうかが、クローザーの資質の大事なところだと考えています。

和田 謙典

和田さんはこれを仕事に誠実に向き合えるかどうかの一部だと考えている。誠実さを大事にしたいという自分の考えを会社の考えにして、評価でも、仕事に誠実に向き合えているかを重く見る。

評価の基準は社内で決めてある。業務への考え方、取り組む姿勢、報告、決めたルールどおりに運用できているか。評価基準と、上に行くまでのステップを見える化し、スタッフが今どのステップにいるかを分かるようにしている。毎日、仕事を始める前には短い研修から入る。

誠実さは、お客様との付き合い方でも大事にしていることだ。

どちらかだけが勝つ仕組みは、基本的に長続きしません。お互いに利益を出しながら長く信頼関係を築くには、成果と誠実さがいつもセットでないと難しいと思っています。

和田 謙典

お客様だけが利益を上げ、請け負う側が利益を上げられなければ、請け負う側はお客様の事業が拡大するスピードについていけない。逆にお客様が利益を上げられなければ、請け負う側も人を増やせない。だからセルプライムは分析と改善を続け、定例会議を開き、レポートを作ることを、手を抜かずに繰り返してきた。短期的な損得には迷いやすいが、そこは追わないと決めている。お客様との付き合いは、年単位の長いところが多い。

社内ワースト1位だったコールセンターのアルバイトは、トップの録音を全部聞いて1位になった

和田さんが営業に出会ったのは大学時代だ。いろいろな仕事をしてみたくて、アルバイトを次々に試した。その一つのコールセンターで、初めて「楽しい」と思った。

何より、数字で成果が見えるところです。評価に応じて給料も増えていきますし、自分の生産性や成果が数字になっているのが楽しいと思えたのが、いちばんの面白さでした。

和田 謙典

最初の3か月ほどは社内でワースト1位だった。電話の向こうの相手も同じ人間だと気づいたことが変わるきっかけだったという。親しい人に自分のいいと思う物を話すときのように話せばいい。そう分かってから、社内に残っていたトップの営業担当者の録音を全部聞き、抑揚の付け方や間の取り方をノート何冊にも書き出した。自分の電話も録音して聞き直し、直す。それを繰り返すうちに1位になっていた。

アルバイト先でそのまま社員になり、その後に退職して、個人事業主として営業の代行を始めた。23歳のころだ。最初の取引先は光回線を売る代理店だった。面談で「若すぎて何もできないでしょう」と言われ、和田さんは1時間だけ時間をもらった。事務所のまわりの家を1軒ずつ訪ね、初めての訪問販売で2〜3件の申し込みを取って戻り、取引が決まった。

そこからは、お客様の紹介で仕事が増えた。経営者どうしの会話で「代行の人がよく取ってくれている」と名前が出て、次の会社につながった。1人では受けきれなくなり、人を増やして会社にした。

自分の成果が数字で見えたから、どこを直せばいいかが分かった。セクションごとに数字を見る今のやり方は、編集部には、和田さんがコールセンターで確かめたことと重なって見える。

数字で見る株式会社セルプライムの違い

設立は2018年1月。従業員は44名(社員7名・アルバイト37名。2026年10月)で、ほかに業務委託の74名が仕事を担う。売上規模は2億円前後。

営業のセクションは営業推進・アポインター・クローザー・カスタマーサクセスに分けている。毎日、仕事を始める前に研修から入る。

インサイドセールスを入れている会社は42%で(HubSpot Japan、2022年)、営業部門の課題の1位は人材の育成だった。その中でセルプライムは全部できる人を育てるのでなく、セクションに分けて人を置く形を選んだ。

和田さんはいまの若いメンバーで売上10億円のラインを越えることを最初の目標にしている。そのあとは、スタッフがいろいろな経験と成功を積める場を広げ、希望する人には独立も支えたいという。

  • 44名従業員(社員7名・アルバイト37名。2026年10月)
  • 74名ともに仕事を担う業務委託の方
  • 4つ営業のセクション(営業推進・アポインター・クローザー・カスタマーサクセス)
  • 2億円前後売上規模
セクションに分けて人を置くための数字

セルプライムのやり方を、自分の会社で使うための3つのこと

一つめ。営業の仕事をセクションに分け、セクションごとに数字を見る。契約が取れないときに、リスト・アポ・商談のどこを直せばいいかが分かり、うまくいったやり方を次の案件でも繰り返せる。

二つめ。クローザーに上がる道と、アポのスペシャリストを目指す道の両方を用意する。全員を同じ到達点に向かわせず、向き不向きに合わせてセクションを選べるようにすれば、人が足りないなかでも一人ひとりが力を出せる。

三つめ。セクションが違っても、評価の基準は一つにそろえる。セルプライムの基準は、商品を勉強して自分の言葉で話せるか、仕事に誠実に向き合えているかだ。分業でセクションが細かくなっても、会社として大事にすることは全員で同じにできる。

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