※取材にもとづく編集記事です

VOL.011 人材・アウトソーシング 公開 / 更新

採用と退職を繰り返して優秀な人を探すより
長い付き合いのほうが売れる

コールセンターはふつう、コストを抑えるために、人が入れ替わる前提で回す。

この会社は 採用と退職を繰り返して優秀な人を探すのでなく、スタッフを直接雇用し、長く続く案件を担当してもらう。案件が長く続くから台本も実績も積み上がり、経験の浅い人でも成果を出しやすい。成果はインセンティブとして収入に反映されるので、人が定着する。

短期の仕事を回すだけなら、優秀な人材を大量に採用して探すほうが合う。代表取締役の池嶋裕一さんはそう話す。企業に代わって電話をかけ、商談の約束を取る株式会社I.K.E.プランニングは、その形を取らない。在宅のスタッフを直接雇用し、長く続く案件を任せて、じっくり慣れてもらう。以前は人が定着しにくかったが、いまは経験の浅い人でも成果を出しやすくなり、依頼元の会社との契約も長く続いている。

株式会社I.K.E.プランニング。企業に代わって電話で商談の約束を取る営業の支援と、問い合わせの電話を受ける代行を、フルリモートのコールセンターで請け負う。2024年には結婚相談所の事業を引き継いだ。本社は神奈川県相模原市。雇用している人は102名(2026年10月)、売上規模は約2億円、2020年12月設立。

業種
営業支援(電話での商談の約束取り)/受電代行/結婚支援/各種BPO・広告代理業
所在地
〒252-0303 神奈川県相模原市南区相模大野8-3-1 ドミール相模大野502
従業員数
102名(2026年10月)
売上規模
約2億円
設立
2020年12月
拠点
本社(相模原市)・町田支店(パルティール町田)
話を聞いた人
池嶋 裕一(代表取締役)
株式会社I.K.E.プランニング 代表取締役 池嶋裕一さん。黒縁の眼鏡にグレーのカーディガン姿で、白い背景の前で笑顔を見せている

短期の案件なら、大量に採用して優秀な人を探す形が合う

ヘッドセットをつけ、明るい部屋でノートパソコンに向かって笑顔で話す女性

労働政策研究・研修機構が2006年の夏に国内のコールセンターを調べた研究では、パートの有期社員を使う理由で最も多かったのは「コストを抑えるため」で、68.1%を占めた。

そのパートの有期社員の離職率は年に21.7%で、正社員の7.6%の3倍近い。平均の勤続年数は正社員の11.5年に対して3.4年だった。厚生労働省の令和6年(2024年)雇用動向調査でも、全産業のパートの離職率は21.4%。パートで働く人の5人に1人は、1年のうちに職場を離れている。人が入れ替わっても回るように組むのが、この業界では多く見られるやり方だ。

短期の仕事を回すだけの会社なら、優秀な人材を大量に採用したほうがいいんです。でも、うちは長くお付き合いいただいている案件が多いので、経験の浅い人でも、案件に慣れながら力をつけていけるんです。

池嶋 裕一

入れ替わりを前提に、数を採って合う人を探す。短期の案件が中心なら、それは筋が通る。I.K.E.プランニングが選んだのは、その反対の道だ。依頼元との契約が続くので、同じ人が同じ商材を長く担当できる。長い付き合いに向く案件を選び、人を探し続けるのでなく、雇った人を育てる。

パートで働く人の離職率

  • コールセンターのパートの有期社員(年・2006年夏の調査)21.7%
  • コールセンターの正社員(同)7.6%
  • 全産業のパート(令和6年)21.4%
  • 全産業の一般労働者(同)11.5%
パートの5人に1人は、1年のうちに職場を離れている上2本は労働政策研究・研修機構(JILPT)ディスカッションペーパー10-04(調査は2006年夏、国内のコールセンター142か所、離職率は雇用形態別の積み上げ N=220)、下2本は厚生労働省「令和6年雇用動向調査」(約15,000事業所を無作為抽出、有効回答は上半期 N=9,024事業所)をもとに当社が作成。

直接雇用で、未経験からでも育てられるようにした

以前のI.K.E.プランニングは、人がなかなか定着しなかった。長く働いてもらい、電話の質を上げるにはどうすればいいか。池嶋さんが行き着いたのが、スタッフを直接雇用し、会社として育てる形だ。

アポイントが取れた分は、インセンティブとして給与に上乗せする。成果がそのまま収入に反映されるので、続ける励みになる。業務委託にすると、仕事の対価だけを払う関係になり、教育に時間を割けない。電話の質を上げるには雇うしかない、というのが池嶋さんの考えだ。直接雇用し、時間をかけて育ててきたことで、電話のプロと呼べる人がだいぶ育った。

雇った人には未経験でも思いきり始めてもらう。台本はしっかり作ってある。分からないことは「分かりません」と言ってよく、探せば出てくるように、よくある質問の一覧を更新し続けている。初めてアポイントが取れた日は、めちゃめちゃ褒める。

台本はしっかりしているので、この通りやればいいよ、と言っています。もし間違えても、OJTやディレクターがフォローするから、思いっきりやってね、と。

池嶋 裕一

在宅でも1人にさせないことを、池嶋さんは意識している。プロジェクトごとに、現場で付き添って教えるOJT担当と責任者を置き、誰に頼ればよいかを決めておく。人事や有給の質問は、社内に作った自動応答(チャットボット)がすぐ答える。

直接雇用で育てる流れ

直接雇用する長く続く案件で、台本と実績を使って電話するアポの分をインセンティブで上乗せ人が定着し、電話のプロが育つ→ 雇っているので、教育に時間をかけられる
直接雇用で時間をかけて育て、電話のプロと呼べる人が育った

契約が続く案件を選び、1人がまず1つの商材を長く担当する

パソコンの画面に、会社名と電話番号と対応の状況が並んだ顧客の一覧が出ている

スタッフが売るのは、依頼元の会社の商材だ。1人が担当するのは、最初は1つの商材にしている。慣れてから、複数の商材を並行して売るようにする。

受ける案件も選ぶ。短期で数の少ない案件は、積極的には取りに行かない。依頼元の会社と長くお付き合いが続きやすく、経験の浅い人でも成果が出やすい案件から、慣れてもらう。

慣れさせるやり方に変えてから、人が定着するようになってきたと、池嶋さんは分析している。募集の条件も、同じ考えで改めた。以前は週1日・1時間からでも応募でき、実際にそういう人が来たが、教育のしようがなく、長く在籍しても育たなかった。いまは週3日以上、1日4時間以上で募集している。

長く雇い、同じ商材で慣れてもらう流れ

直接雇用し、長く続けてもらう契約が続く案件で、同じ商材を担当する売れたトークを文字と音声で全員に渡す経験の浅い人でも成果を出しやすい人が定着する
長く続く案件で慣れてもらうと、経験の浅い人でも成果を出しやすい

売れたトークを文字と音声で残し、全員に渡す

目標から資料、電話、商談、契約までの営業の流れを、木の駒に載せた人形で順に並べた図

新しい案件が始まると、まず電話のプロのスタッフがかける。そのスタッフには、決まった案件を回しながら新しい案件も受け持ってもらう。そこで売れた話し方を、社内では勝ちパターントークと呼び、共有する仕組みを作った。

トークは文字に起こして読めるようにし、音声もそのまま聞かせる。電話でよく出る質問と答えも、一覧に足し続けている。新しく入った人も、先にかけた人が積み上げた台本と答えを使って電話をかけられる。

依頼元との契約が続き、残った人は社員になっていく

ヘッドセットをつけた人が、ノートパソコンのキーボードを打っている手元

依頼元の会社との契約が続くので、スタッフは同じ商材を続けて担当できる。

池嶋さんによると、優秀な人は入って2〜3か月で分かる。半年から1年見て、OJT担当を任せる、リーダーにする、社員に登用する、と順に上げていく。パートスタッフからコール専任の社員になった人は、これまでに3人いる。採るときに見るのは、声の聞き取りやすさと、いい意味での鈍感力だ。電話では、切られたり「いりません」とすぐ言われたりする。そこで気持ちを切り替えられる人は、長く続けられ、成果も出すという。

数字で見る株式会社I.K.E.プランニングの違い

雇用している人は102名(2026年10月)。売上規模は約2億円で、働く人の92%は女性だ。採用は進めていて、人数はこれから増える。最初の5年間は求人にお金をかけず、約300人を採用した。

やめる人の8〜9割は、最初の1か月でやめている。在宅や電話の仕事が自分に合わないと、最初の月に判断する人が多い。一方、半年残った人のうち、やめるのは2〜3割にとどまる。

  • 102名雇用している人(2026年10月)
  • 約2億円売上規模
  • 2〜3割半年残った人のうち、やめる人の割合
  • 3人パートスタッフからコール専任の社員になった人
半年続いた人は、やめにくい

I.K.E.プランニングのやり方を、自分の会社で使うための3つのこと

一つめ。電話や営業を任せる人は直接雇用し、成果の分をインセンティブで上乗せする。教育に時間をかけられ、人が定着する。

二つめ。1人にはまず1つの商材を担当させる。長く続く案件から慣れてもらうと、経験の浅い人でも成果が出やすい。

三つめ。売れた話し方を文字と音声で残し、全員に渡す。新しく入った人も、先にかけた人の台本と答えを使って始められる。

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