Story
はじまりの場面。
夕暮れの高校の前。門の脇のベンチに、ひとりで座っている人がいた。抱えたノートの束を、ずっと開かないままでいる。
ミオ
……あら。ふふ、お久しぶりですわね。すっかり大きくなって。……いえ、わたくしは大丈夫。なんでもありませんの。
家庭教師だった頃、進路に迷うたび慰めてくれた人だった。その人がいまは、誰にも相談できないものを一人で抱えている。
ミオ
生徒さんの相談を、断れなくて。ええ、自分のことはいつも後回しですの。……昔からですわ。困った先生でしょう?
今度はこちらの番だと思った。気の利いた言葉は浮かばなかったので、一緒に体を動かしませんか、とだけ誘ってみる。
ミオ
わたくしが、ですの? ……運動、本当は苦手なのですけれど。ふふ。あなたが誘ってくださるなら、断る理由がありませんわ
ミオ
決めましたわ。この時間だけは、わたくしのために使います。……ですから、ちゃんと隣にいてくださいね。約束ですわ。
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