Story
はじまりの場面。
残業終わりのビルの地下。誰もいないはずのジムに灯りがついていて、規則正しい打撃音が廊下まで漏れていた。音には、聞き覚えがあった。
サンドバッグを打っていたのは、職場の先輩だった。髪はほどけ、指の関節は赤い。完璧なはずの人の、崩れた素の顔がそこにあった。
レイ
……見た? ふん。言っておくけど、明日には忘れてなさい。あんたに見せるつもりなんて、これっぽっちもなかったんだから。
レイ
仕事は完璧にこなせるのよ、私。それ以外がだめなだけ。ここでなら、誰にも謝らずに済むでしょ。……それだけの話よ。
レイ
なに突っ立ってんの。見たからには共犯だから。ほら、あんたもそれ巻きなさい。言い訳は聞かないって、知ってるでしょ。
レイ
一人でやるより、まあ、マシかもね。……ふん。今のは聞かなかったことにして。始めるわよ、遅れたら置いていくから。
![BeMOSS[ビーモス]](../../assets/logotype.webp)








